皮膚の病気概要
 

ネコは全身を密生した皮膚でおおわれています。
皮膚はネコの体でもっとも大きな臓器で体重の1/10の重さを持っています。
また、重要な役割を持っています。
体の表面を覆い保護する、体内の水分を調節、細菌やウイルスなど病原体の侵入を防ぐ、
ビタミンDを合成する、脂肪を貯蓄するなどの役割をもちます。
さらに、寒さ熱さ、痛さを感じるなど重要な感覚器官でもあります。

皮膚はつねに外界に接しているので汚れや細菌がくっついて皮膚病を引き起こしたり、
ノミ、ダニなどの寄生虫が繁殖しやすいという問題も抱えています。

●ネコの皮膚は、アルカリ性であるということや腺から分泌する液によって、
微生物やカビが皮膚に浸入したりそこで増殖することを防ぎます。
そして、人間の皮膚は弱酸性ですので、ネコ皮膚がアルカリ性というように
まったく皮膚の性質が違うので、ネコに人間用のシャンプーを使うのは避けるべきです。

また、背中の尾のつけ根から数センチほど上に分泌物をだす腺(尾線)があります。
健康な時は目立ちませんが、炎症をおこしたり年をとるとネコはかゆがって
ここをなめたり、かんだりします。そのためここは脱毛しやすくなります。

●現代のネコは昔より皮膚の病気にかかりやすくなっているといえます。
昔は自由に食べ物をあさって、それによって体調を整え、また栄養の偏りを
ただす事ができましたが、現代ではネコ専用の食事やネコと人間が一緒に暮らすための
役に立つさまざまな製品が登場してきた反面、ネコが病気を起こす要素が大変増えている
ように思います。
大気汚染、栄養の偏った食べ物、さまざまな薬、それに人間社会で暮らすストレスです。

ノミ・ダニ以外に皮膚病の原因となるものを以下に挙げます。
■大気の汚染
大気中に含まれる排気ガスや化学物質などがネコの皮膚を汚したりします。
これによって、物質を作ったり貯蔵したりする皮膚の能力が低下します。
その結果ビタミンやミネラルが足りなくなりネコは皮膚病を発症します。
また、大気汚染のひどいところでは、被毛が汚れやすくなるため、
飼い主がひんぱんにネコを洗う傾向もでます。しかし、これはネコの皮膚の脂質を
奪う事になりかえって皮膚病にかかりやすくさせます。

■太陽光と人工照明
人工照明では、屋内に住んでいるネコは日が落ちてからも光をあびることになり、
被毛の抜け替わりサイクルが狂う事もあります。
太陽光では、紫外線にあたることで異常がおこることもあります。

■ストレス
人間社会では、騒がしい場所で飼われている、飼い主や住む場所が変わる、
新しい動物が加わるなどさまざまな要因がネコに強いストレスをあたえ、
免疫力が下がったり、心因性の皮膚炎をおこしたりして脱毛することがあります。

■環境の恒常性
自然環境の寒暖の差は皮膚に適度に刺激を与えます。
しかし現代社会では、冷暖房によりあまり気温の変化がありません。
そのため被毛のの抜け替わりサイクルが狂いがちです。さらに、
皮膚の機能や、病原体に対する抵抗力も下がります。

■栄養の障害
飼い主の中にはネコに大変栄養の偏った食事を与える人が少なくありません。
たとえば、人間と同じ食事や、栄養過多の食事、品質の良くないキャットフードです。
このような食事が続くと栄養性の病気になり皮膚にも病変を生じさせます。
また、食事が古くなり酸化していると体内のビタミンが破壊され皮膚病を引き起こします。

■薬物の過剰投与
副腎皮質ステロイド薬は炎症などに対してたいへん治療効果の高い薬ですが、
副作用も強いです。
ステロイド薬を長期にわたって過剰に与えると、一部の臓器がきちんと働かなくなったり
免疫力が低下して、細菌、カビ、寄生虫が低下して感染しやすくなります。

ほかにも、ネコの体内の異常が考えられます。
ホルモンの分泌が多すぎるまたは少なすぎる、免疫に異常がある、
内臓の病気を発症しているなどです。

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