角膜炎
 

目の表面をおおっている角膜が炎症をおっこした状態を角膜炎といいます。
角膜炎は角膜に傷がつくことによって生じるので、ネコは目を痛がり、
涙を流したり、目やにで目の回りが汚れたりします。
また光をまぶしがりさかんにまばたきをします。
角膜は白く濁り、内部に正常な角膜には存在しない血管(新生血管)が生じます。

これらの症状は炎症が悪化するほどはっきり現れます。
とくに角膜に潰瘍ができると、角膜の表面がひどく変化してきます。
なお、ネコの角膜は4つの層からなっています。
表面から内側に向かって上皮細胞層、角膜固有層、デスメ層、そして内皮細胞層です。

角膜炎といっても、それが発症した部位や程度によってさまざまに分類します。
代表的な角膜炎について説明します。

●表層性角膜炎
通常、片目におこります。ネコは涙を流し、光をまぶしがります。
角膜のまわりから中心部に向かって細い血管が伸びていきます。
正常な角膜は透明ですが、この病気になると角膜は透明性を失い、
にごって見えます。

●深層性角膜炎
通常、両目におこりますが、ときには片目だけのこともあります。
角膜の深層がおかされ、表層性角膜炎よりもいっそう光をまぶしがり、
瞳孔は縮んでいます。
角膜が白くにごって全体にもりあがり、角膜内には周囲から深層へ向けてブラシ状に
短く血管が侵入します。

●潰瘍性角膜炎
多くの場合、片目だけにみられます。角膜の一部が失われ、深いところまで
おかされるため、まぶしさと痛みがたいへん強いようです。
また、角膜もひどく変化し、潰瘍のふちは白くにごって盛り上がっており、
ネコは強い痛みのために目をあけることもできません。
潰瘍の程度と角膜への血管侵入の状態はさまざまです。


角膜炎を引き起こす原因は外因性と内因性とがあります。

外因性の原因は、ほこりや異物が目に入る事故やケンカで角膜に傷ができる、
酸やアルカリ液が目に入る、目を強くこする、シャンプーが目に入るなどによって
角膜が刺激されることです。

内因性の角膜炎には、病院や栄養障害などによるものがあります。
アレルギー性の病気、細菌やウイルス、真菌などの感染、
涙腺の異常で涙の分泌が少ないなどが原因となります。

またビタミンA、ビタミンB2、ビタミンCの不足による栄養障害、結膜炎、緑内障
などの目の病気に続いて角膜炎がおこることがあります。

治療では、まず治療の前に洗眼します。
その後、原因が外因性であれば、原因を取り去る処置を行います。
たとえば、目に異物が入って炎症を起こしている場合には、
異物を取り除きます。
一方、原因が内因性であれば、角膜炎を引き起こしている病気を治療します。
その後症状や原因にあわせて目薬を点眼します。
炎症を抑える薬、角膜の傷に細菌が感染しないように予防する抗生物質、
潰瘍の進行をおさえる薬などです。

もし、潰瘍が進んで重傷になり、角膜に穴があいたような場合には、瞬膜や
結膜を引き延ばして一時的に目を覆って保護する手術を行います。
また回復するみこみが無いときには、角膜移植をおこなうこともまれにあります。

治療の期間中家庭ではネコが目を痛がっていないか、
目をこすっていないかを十分に注意する必要があります。
こすると、角膜炎が悪化するためです。
どうしてもネコが触ってしまう場合には、獣医師にエリザベスカラーを装着してもらいます。

角膜炎は完治するまで多少時間がかかるので、その間、獣医師の指示に
したがいネコをしっかりと管理し、回復するように努めなくてはなりません。

人間用の目薬を使うと悪化させることがあります。



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