ビタミンB欠乏症
 

ネコの栄養性の病気の中でも、ビタミンB1の欠乏はとりわけ起こりやすい深刻な病気です。
ネコはイヌや人間と比べ、大量のビタミンB1を必要としているからです。
特に、魚を主体とした食生活を続けているネコは不足しがちです。

症状が重くなると立ち上がれなくなるなど神経症状が出ます。

ネコはビタミンB1欠乏症意外にも、ビタミンB2やB6の欠乏症を発症することがあります。
これらの病気はB1欠乏症に比べるとまれですが、症状は似ており、
はっきりと区別することは困難です。

●ビタミンB1(チアミン)欠乏症
初期のまだ症状が軽い段階では、ネコは健康な時より食欲が低下したり
軽い吐き気を見せたりして、やせてきます。

病気が進むと、目の瞳孔が開きがちになり、歩き方がふらふらと定まらなくなるなどの
神経症状がでます。
そして座った時も、普段と違って背中を丸めたような姿勢をとるようになります。

症状が重くなると、けいれんをおこしたり、体をかたく丸め異常な姿勢をとったり、
大きな声で鳴き続けたりします。

B1欠乏症が長く続くと昏睡状態におちいり、死ぬ事もあります。

原因は多くは食事が原因です。
人間の6〜7倍ほどB1を必要とします。そのため、人間やイヌと同じような
食事を取っていればB1欠乏症になりやすいのです。

また、貝類、甲殻類(カニ・エビ)、それに魚類の内臓の中には、ビタミンB1を
破壊するチアミナーゼという酵素が含まれています。
そのためこうした食物を生で多く食べると体内のB1が破壊され、B1欠乏症となります。

しかし、チアミナーゼは熱に弱いので、こうした食品も火を通せば問題ありません。
生魚など生の魚介類をあまり食べさせないようにすることです。

また、ネコに古くなったドライフードを食べさせていると病気を発症することもあります。
最近のほぼほとんどのネコ用のドライフードにはビタミンB1が添付されているようですが、
時間がたつとこれらB1がこわれることがあるからです。

チクワ、カマボコなどの魚の練り物を長い間食べている偏食のネコは、食物中から
十分にB1を接種出来ずに、この病気になる可能性があります。

ネコが慢性の下痢などをおこしていると、B1を十分に吸収できなくなります。
また病気などで長い間、食欲不振が続いているときにもB1の摂取量が減り、
欠乏症を起こす可能性があります。

治療では、はっきりとした症状が現れている病状の重いネコは、ビタミンB1を注射したり
ビタミンB1を内服して与え、その時の症状をおさえる対症療法を行います。

また、 偏食の激しいネコには食事にビタミン剤を混ぜるなどして、不足を補います。

●ビタミンB2・
B6欠乏症
これらビタミンが足りないと、ネコは食欲不振になって体重が減少します。
とくに成長期にビタミンB6が欠乏すると成長が妨げられることがあります。
また、これらビタミン欠乏症になると、頭部や耳の周辺に脱毛や皮膚炎をともなう
皮膚病がおこります。舌炎や口内炎など口腔内の病気にかかりやすくもなります。

これらはネコが下痢などを起こして吸収量が減ったときや、これらビタミンが不足している
食事を与え続けているときにおこります。

ビタミンB2は加熱しても破壊されませんが、B6は高温になると破壊されます。
そこで、ふだんから加熱調理した食べ物をネコに与えているときは、
ビタミン剤などを与えてB6を補給する必要があります。
また、妊娠期、授乳期のメスネコや、成長期の子ネコは、普通の大人のネコより
多くのビタミンを必要とします。
そのため栄養成分をよく考えた食事を与えなければ、ビタミンが欠乏します。

治療では、ビタミンB2欠乏症やB6欠乏症が疑われる場合、ふつうはこれらの
ビタミンだけでなく、B1やB12をふくむビタミンBの総合剤を与えます。
ビタミンB2やビタミンB6だけを与えることはあまりありません。

牛乳、卵、レバーなどにはこれらのビタミンB群がふんだんに含まれています。
ネコがやせすぎでなかなか体重が増えない、ネコの成長が遅いなど、
ビタミンB群の不足が疑われるときはこれらの食物を意識して与えると良いでしょう。

こうした食物はビタミンAなども豊富です。
しかし、ビタミンAを過剰に与えすぎると別の病気になる可能性があるので
与えすぎにも注意してください。

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