上皮小体の異常
 

骨の形成に欠かせない栄養素の1つがカルシウムです。
ネコが食事によってカルシウムを十分にとらないと、まれにクル病
になりますが、骨が正常に成長しなくなります。
一方、カルシウム不足によって首のあたりにある「上皮小体」という
器官が異常に活発にはたらく病気(上皮小体機能亢進症)になることもあります。
この病気になると骨が変形する、骨折しやすくなるなどの症状が現れます。

ネコがカルシウム不足のためになりやすい病気は、クル病よりもむしろ
この上皮小体の異常です。

若いネコほど発症する事が多く、症状も早く進行します。
病気のはじめの頃には動作やしぐさに変化が現れます。
突っ立ったまま、ぎこちなく歩いたり、片足を引きずったりします。
また、体の柔軟性が失われ、身繕いも容易ではなくなります。

病気が重くなると、全身に痛みが生じるので、
ネコはだかれたり体をさわられるのを嫌がるようになります。
熱が出る事もあります。こうなるとネコは元気を失い、食欲不振におちいります。

手足の関節が変形したり脊椎が曲がるため、体格が変形する事もあります。
とくに脊椎が変形すると神経に障害が現れることも少なくありません。
そのために強い痛みが生じたり、排尿や排便が困難になることもあります。
このときには腸内にガスや便がたまるため、腹が膨れてきます。

また、骨が弱くなって骨折しやすくなり、ちょっとぶつかったり高いところから
飛び降りただけでも骨折します。
症状がさらに進むと立てなくなる事もあります。

カルシウムは骨を形成する以外にも生命活動でたいへん重要な役割を
果たしており、その血中の濃度を調整する仕組みをもっています。
その調節の中心的役割を持っているのが上皮小体です。

食事で十分な量のカルシウムが含まれておらず、血中のカルシウム量が
不足し続けると、上皮小体はカルシウムを血液中に放出しろという
指令をだします。
その結果、骨からカルシウムがどんどん排出され、骨がよわくなります。

また、カルシウムをきちんと取っていても食べ物の中にリンが過剰に
含まれているとカルシウムを体外へ排出する働らきをしていしまいます。
食事中には、リンとカルシウムが1:1の割合が好ましいとされます。
そして、ビタミンDが不足しても、この病気になることもあります。

治療では、リンとカルシウムのバランスの良い食事を与えます。
ネコの症状が重い場合には、カルシウム剤を食品に添加したり、
注射によっておぎなうこともあります。
痛みのために元気や食欲を失っている場合には鎮痛薬、抗炎症薬を与えます。
この病気は、治療効果が現れるまでかなり時間がかかります。
家庭では骨折したりしないように気を配る必要があります。

また、骨は一度変形すると戻らないこともあります。
この病気のメスネコが妊娠すると難産になりやすく、親子ともに
生命が危険になるので不妊手術を早めに受けさせて妊娠させない
ようにしなければいけません。

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