肛門嚢の炎症と膿瘍
 

肛門嚢は袋状の組織で、肛門の周囲の皮膚から1〜2cm奥の左右にあります。
その中でにおいのある分泌物がふくられ、肛門の近くに空いている小さな穴から少しずつ
排出されます。
肛門嚢が炎症をおこすと肛門嚢炎といい、
また炎症が進むなどして内部が可能することを肛門嚢膿瘍と呼びます。

肛門嚢炎をおこすと、ネコはしきりに尻を気にするようになります。
肛門をなめたり、尻を床にこすりつけようとする動作を繰り返します。
炎症で痛みが生じると、飼い主や家族にも尻を触られるのを嫌がります。
痛みがひどいときには元気をなくしたり食欲不振になることもあります。

肛門嚢の中が化膿すると、肛門のまわりが腫れてきます。
炎症だけのときより痛みがひどいため、ネコは食欲や元気を失う事が多いようです。

治療しないまま時間が経つと肛門嚢が破れ、肛門の横に穴があき、
そこからうみが出てきます。

穴の直径は1cm前後と小さいことも有りますが、直径2〜3cm異常になることもあり、
血のまじったうみが出る事もあります。
傷が治らなくてもうみが出ると痛みが弱まるため、ネコはそれ以上肛門のまわりをあまり
気にしなくなることもあります。

また、この穴から細菌が入り込んで肛門嚢に感染すると、内部が化膿して肛門嚢膿症
になります。

治療では肛門嚢炎だけの場合は、まず肛門嚢を刺激してやり、中野分泌物や膿汁を
排出させます。
その後、抗生物質、抗炎症薬を投与する内科療法をおこないます。
嚢瘍をおこしている場合は、肛門嚢の刺激だけで膿をださせることが、
難しいこともあります。
その場合は注射針を刺して膿を抜きとったり、小切開をおこなってうみを出すなど
の必要があります。
皮膚に穴があいてうみが出ている時には、内部を消毒して抗生物質や抗炎症剤を
与えるなどの内科療法を行います。
時には開いた傷を縫合したり、肛門嚢そのものを摘出する手術が必要になることもあります。

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