薬物による中毒

 

私たちもまわりには、色々な薬品(人間用病気治療薬・清掃につかう薬剤など)があります。
それらは人間に対して有害であることも多く、そのため、特に毒性の強いものは、
特殊な容器に入っていたり厳重に梱包されています。

しかし、これら薬品が身近におかれていると、ネコはそれを引っ張り出し
食い破られたりするかもしれず、たいへん危険です。

ネコは食べ物に関してはなかなか慎重なので、それらの匂いをかいでみて、
好きな食べ物でなければ簡単に食べたりはしないはずです。

しかし、好奇心旺盛なので、何にでもさわってみたりその上を歩いたりしてみます。
そしてあとで手足に付着した毒物を丁寧になめとり、中毒を起こす可能性があります。

以下にネコが中毒を起こしやすい人間に身近なものをあげます。

●殺鼠剤による中毒
ネオが体に付着した殺鼠剤をなめたり、殺鼠剤を食べたネズミを捕獲して食べると
中毒をおこします。
殺鼠剤にはクマリン系の薬物(抗血液凝固剤)が使われる事が多く、
これはネコに中毒を引き起こします。
ごく軽い中毒をおこした場合は、元気を無くしたり軽度の貧血を起こすだけで
済みますが、重くなると血便や、鼻血を出し、全身に出血がおこるような重傷の中毒
では、死亡する事もあります。

●車の不凍液による中毒
自動車のラジエーター液として使われる不凍液には、エチレングリコールという化学物質
が入っています。この物質には甘い匂いがあり、イヌやネコが好んでなめるようです。
これをなめたネコは元気をなくし、吐き気や運動失調などの症状を示します。
重い場合には腎不全などを併発し死亡することもあります。

●有機リン剤による中毒
殺虫剤には有機リン系の薬剤が使われていることがあります。
この薬物は以前はよくネコのノミ取り粉やノミ取り首輪などに少量入っていましたが、
毒性が強いため最近ではかなり減っているようです。
ネコが有機リン剤を中毒になるほど体内にとりこむと、よだれを垂らしたり
呼吸困難おおこすことがあり、重い場合には死亡することがあります。

●漂白剤による中毒
消毒やカビの除去、衣類の漂白などにはよく塩素系の薬剤が使われます。
ネコがこれらを直接舐めたり飲んだりすることはあまり考えられませんが、
スプレーしたものが体に付着したり、食器やゲージなどの洗浄に使用された
薬剤が完全に洗浄されていないことがあり、それをなめたネコは、
泡をふいたり嘔吐したりすることがあります。

●アスピリン系の薬による中毒
人間用の鎮痛・解毒剤として使われるアスピリンやアセトアミノフェンをネコに
飲ませると、ネコが中毒することがあります。
アスピリン系の薬はネコには鎮痛効果があまりないだけでなく、
食欲不振や吐き気を生じさせ、さらに肝炎を引き起こすこともあります。
ネコには決して飲ませてはいけません。

中毒の治療ではまず、対症療法を中心にした内科療法が行われます。
有害な薬物を飲み込んでからあまり時間がたっていない場合、薬物を吐かせる
ことができれば早く回復させられるものの、このようなことはむしろまれです。

中毒源がはっきりしており中和できる物質がある場合には、特殊な治療法が
行われることもあります。

飼い主は薬品類の管理に気を配り、ネコが病気になって薬を投与しなければ
いけなくなったら必ず獣医師に相談するようにしましょう。


close