先天性の心臓病

 

ネコの中には、生まれつき心臓に欠陥をかかえているネコもいます。
その割合は100頭に1〜2頭とみられています。
しかしなかにはシャムネコのように先天性心臓病が多いネコの種類もいます。

心臓の欠陥が軽いときには、ほとんど症状が現れずに一生を終えるネコもいます。
しかし重い先天性の異常をもって生まれたネコは、成長する以前に死んでしまいます。

また、ネコの心臓は小さく、このような欠陥を抱えたネコには体力もないので、
手術による根本的な治療はむずかしいといえます。
そこでふつうは薬によって心臓の負担を軽くし、またネコの体力を保たせるような
看護をします。

軽いものでは、運動をした後に息苦しそうにする、空咳をする、疲れやすいなどの症状
が現れます。
運動のあとにチアノーゼをおこして舌や唇が青紫色になることもあります。

重いものでは普段から呼吸が荒くなります。
また運動したがらず、いつでもじっとうずくまって動こうとしないネコもいます。
体もなかなか成長せず、生まれてまもなく死んでしまうことも少なくありません。

症状が進むと、肺がうっ血して、肺に水がたまります。
そのためにネコは呼吸困難におちいります。
また、胸や腹に水がたまったり、体温が下がったりすることもあります。

ネコが心臓の病気になると、あまり症状が現れていない時でも、
突然状態が悪化して死ぬ事があります。

健康なネコでは、心臓と体内をめぐる血液の流れは一方通行です。
しかし、先天性の心臓病を持つネコの多くは、心臓の部屋と部屋をへだてる弁、
血管と心臓の間の弁に異常が生じています。

以下、ネコに多い先天的な心臓病について説明します。

●房室中核欠損症
心臓の右側と左側にはしきりの壁があります。
ネコの中には生まれつきこの壁に穴やすきまのあるものがいます。
ねこの先天的な心臓病では、心室と心房のしきりの両方にわたるような形で
穴があいている例が多いようです。
左右の心室のしきりに穴があいていると、左側の心臓から右側の心臓へと
血液が流れ込みます。
そのため心臓に大きな負担がかかり、心臓が肥大するなどの症状が現れます。

よく似た症状をしめすものに心内膜庄欠損症という先天性の心臓病があります。
この病気もやはり、心臓の左右がきちんと閉じておらず、しかも心房と心室の間の弁
も異常をいこしています。

●房室弁奇形症
心臓の心室と心房の間の弁が異常に厚い、形がおかしい、
心臓の壁とのくっつきかたがおかしいなどのため、
弁がきちんと閉じなくなる病気です。
これはネコには比較液多く見られる先天的な心臓病です。
この異常が軽い時には、とくに症状は現れません。

●動脈狭窄症
生まれつきで動脈がせまい病気です。
大動脈は全身に血液を循環させるための通路なので、この血管がせまくなると、
左心室に大きな負担がかかります。
そのため心臓が肥大します。

●動脈管開存症
ネコが母ネコのお腹の中にいるときは、肺動脈と大動脈は動脈管という血管で
繋がっていて、肺動脈から大動脈へと直接血液が流れこむようになっています。
この管はふつうは生まれるとまもなく閉じます。
しかし、なかには成長した跡にもこの管が開いたままのネコがいます。
この病気では動脈血管を閉じる手術を行う事があります。

●ファロー四徴症
心臓が4つの異常を同時にもっている重い病気で、特徴的な症状はチアノーゼ
そして、歯ぐきなどが紫色に見えるなどです。
4つの異常とは、心室中隔の欠損、右心室の肥大、肺動脈の狭窄、
それに本来は左側にある大動脈が心臓の右側よりにあるというものです。

治療では、人間では手術でで治療しますが、ネコは心臓が小さく手術が難しい上、
手術に耐えられるだけの体力を持たない事が多いので、
手術による根本的な治療はあまり行われていません。
そこで、ふつうは、現れている症状を和らげるための対症療法を行います。
また心臓の欠陥にあわせて、心臓の働きを助けるための薬を
組み合わせて与えます。






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