心筋症

 

心臓の筋肉(心筋)に異常がおこり。進行がきちんと働かなくなる病気です。
ネコがなりやすい心臓病です。
原因は良く分かっていません。

元気がなくなって食欲も失われます。
肺に水がたまって呼吸が困難になり、空咳をすることもあります。

病気が進むと運動をしたがらなくなり、
1カ所にうずくまって動こうとしないこともあります。
ときには胸水や腹水がたまることもあります。

心筋症になると血液がたまりやすくなるため、しばしば血管の内部に
血のかたまりがついて血栓ができます。
これはたいへん危険な状態です。

お腹を通る大動脈に血栓ができると、後ろ足がまひしてネコは前足だけで
体を引きずって移動します。
このときネコは叫び声をあげて痛がります。
血栓ができたら、ただちに治療を行わないと、ネコは死んでしまいます。
また、たとえ生き延びても、放置すると足の先が壊死します。

心筋症では、治療を受けて経過の良い時でも、突然死する事があります。

心臓には4つの部屋があります。
このうち主に左心室に異常が現れます。
左心室は全身に血液を送り出す役割を持っているので、十分に働かなくなると
ネコの体内に血液がいきとどかなくなり、体温が下がる、元気がなくなるなど、
さまざまな症状が現れます。

心筋症は、3つに分けられます。
また、この3つが混じっていて分類できない場合もあります。

●肥大型心筋症
若いネコまたは6〜10才くらいの中年のネコがこの病気になることが
多いといえます。
肥大型心筋症になったネコにはとりわけ血栓が出来やすいようです。
また、血液を十分にためておくことができず、
1回の鼓動で全身に送り出す血液の量が減ります。

●中年以上のネコに多く、とくにシャムネコやアビシニアン、ビルマネコ
などがなりやすいようです。
この心筋症では体温が低くなり、脱脂症状がみられることがあります。

●拘束型心筋症
10〜12才以上の年をとったネコに多い病気です。
心臓の内部をおおう繊維質の膜が厚くなって、鼓動の時にも左心室が
十分に広がらなくなります。

拡張型心筋症は、多くの場合、食事中のタウリン(必須アミノ酸の一種)が
足りないことが原因です。
最近のキャットフードはタウリンが添加されるようになったため、
以前に比べて拡張型心筋症になるネコは減りました。

しかし、それ以外の心筋症の原因は今の所良く分かっていません。
ウイルス感染症、自己免疫疾患、遺伝的な要因などが疑われています。

治療では、どの型の心筋症も、心臓の働きを助ける薬や、それぞれの症状を
やわらげる薬を与えて治療を行います。
この薬は心筋症の型によって種類がちがいます。

●肥大型心筋症では、肺に水がたまっている(肺水腫)には利尿薬を与え、
なるべく体内の水を尿として排尿させるようにします。
肺水腫がおさまったら、心臓が広がりやすくなる薬や、心臓肥大を抑える薬、
さらに心臓の負担を軽くするために利尿薬を投与します。
強震薬は使いません。

また、血栓が出来やすいため血液を固まりにくくうるアスピリンなどの
薬を投与して予防します。
すでに血栓が出来ている時には手術か血栓をとかす薬を使って、できるかぎり
早く血栓を取り除きます。
しかし、手術も薬による治療もネコにとって危険性が高く、死亡することも少なくありません。

●拡張型心筋症ではまず、ネコの全身の状態を改善するための治療を行います。
体温が下がっているときには体を温めます。
脱水を起こしている事も多いので輸液をおこない、
胸水がたまっている場合には胸に注射針をさして水を抜きます。
心臓に対しては血管拡張薬、利尿薬などを与えます。

この病気はタウリン不足から起こる事が多いので、タウリンを与えます。
早いうちに治療を受けれ葉、ネコは回復します。

●拘束型心筋症では、体を安静に保ち、まず肺水腫や胸水の治療を行います。
利尿薬や血管拡張薬を与え心臓の働きを助け、また血栓を予防する薬を与えます。


拡張型心筋症をのぞくと、いちど心筋症になったネコは治療しても
ほとんど回復は望めません。
とくにいちど、血栓症になったネコは、血栓を取り除いても再発することが多く、
治療しても1年以上生きることはまれです。
また、心筋症のネコは、治療の経過がよくても突然死ぬっことがあります。




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