ガン(腫瘍)の病気概要

 

生活環境が豊かになり、ネコの平均寿命が飛躍的に延びています
また、いろいろな病気に対する治療法も進歩しました。
その結果、ネコにも老齢期特有の病気が多くなってきました。
腫瘍もその1つです。

一昔前まで、腫瘍といえば悪性腫瘍(ガン)を連想させ、
まるで死を宣告されたように恐れられていました。
イヌの腫瘍にくらべてネコの腫瘍は悪性の割合が高いといえます。
しかし、ただ恐れるのではなく、病気をよく理解することが重要です。

腫瘍について用いられる言葉はとても煩雑で混乱しやすいので、
まず言葉と意味を正確に理解する事が大切です。
腫瘍というのは、遺伝子が変異をおこしたために
細胞の分裂に異常を生じたものです。

異常な細胞が自立性をもってどんどん増殖し、
その結果、正常な組織は大きな損傷を受けます。
そしてついには正常なはたらきが出来なくなってしまいます。

腫瘍は”新生物”ともいい、大きく「良性腫瘍」・「悪性腫瘍」とに
分けられます。
このうち悪性腫瘍は一般的にガンと呼ばれます。
(なお専門的には、悪性腫瘍はさらに上皮性悪性腫瘍と非上皮性悪性腫瘍
に分けられ、前者をガン、後者を肉腫と呼びます。)

良性腫瘍とは、ある一定の大きさになると成長が止まります。
多くは転移しないので、早期に発見し、手術で完全に取り除けば、
再発を防ぐことが出来ます。
肛門周囲腫、繊維腫、軟骨腫などです。

一方悪性腫瘍になった細胞はかぎりなく増殖を続け、ついにはネコを死に至らしめます。
乳腺ガン、腸腺ガン、扁平上皮ガンなどです。

良性と悪性の区別は病理検査によって判明します。
肉眼で見ただけでは、わかりません。

もし悪性腫瘍が見つかった場合には一刻も早く対応することが大切です。
腫瘍によっては手術で切除すれば安心できるものも少なくないからです。

腫瘍の原因はさまざまで、腫瘍形成ウイルス、遺伝、環境栄養、ホルモンなど多数の因子
が考えられます。どの場合でも初期の治療が非常に大切です。

近年、外科手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、血管新生阻害療法などが発達し、
さまざまな治療法が提供されつつあります。

体の表面にガン腫瘍ができたときには、日常的になでたり触ったりする日常生活の中で、
早い時期に見つけることができます。
また、ガンが増殖していくためには大量の栄養を必要とするため、
ネコは短期間に痩せたり、毛づやが悪くなったりします。
そして眠っている時間が長くなります。

顔や耳の形が変わったり、乾いたせきが続いたり、おなかが腫れてきたり、
消化管から出血がある場合は、急いで獣医師の診察を受けて下さい。

ガンには特有の症状はありません。
ネコが高齢になるにつれてガンを生じやすくなるので、7〜8才を過ぎたら、
定期的な診察を受ける事が大切です。

以下にガンのサインを挙げておきます。

1 皮膚や口の中などにできたこぶがなかなか治らない。
または、しだいに大きくなる。
2 傷やただれが治らない。
3 理由が分からずに体重が減る。
4 食欲が無くなる。
5 体の開口部(口や鼻の穴、肛門など)から血もしくはうみが出る。
6 体からいやなにおいがする。
7 食べにくそうにする、または食べ物を飲み込みづらそうにする。
8 運動をいやがる、体力が無くなる。
9 足をひきずりつづける、体の一部のまひがつづく。
10 呼吸が不自然、排尿や排便が困難になる。


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