甲状腺機能亢進症

 

甲状腺ホルモンはネコの体全体の新陳代謝をうながし、また体温を一定に
保つはたらきを持っています。
このホルモンは器官(首の付け根)の左右にある2つの甲状腺から分泌されています。

年とったネコでは、甲状腺の働きが異常に活発になり、甲状腺ホルモンが必要以上に
分泌されることがあります。
これを甲状腺機能亢進症といいます。
人間のバセドー氏病と同じ病気です。

かつてはまれな病気でしたが、いまでは年をとったネコがいまでは年をとったネコの
10頭に1頭はこの病気になっているという報告もあります。

この病気の症状は、食欲が旺盛になって食べ物をガツガツ食べるにもかかわらず、
やせています。

落ち着き無く動き回り、攻撃的になるネコもいます。
水を大量に飲んでひんぱんに尿をします。
吐いたり下痢をしたり、被毛が汚れやすくなって毛づやがなくなり、
フケが増えることもあります。

手足の爪が伸びやすいことも特徴です。
体温が上がるので、ひんやりした場所を好むネコもいます。

病気が進むと、心臓の鼓動が乱れて不整脈になったり、脈が速くなったりします。
心筋症になることもあります。
こうなると、ネコはそれまでとは逆に食欲がなくなって衰弱します。

治療では、手術と薬による治療があります。

●手術
大きくなった甲状腺を手術によって取り除きます。
治療効果が高く、もっともよく行われる方法です。

甲状腺を片方でも残す事ができれば、ホルモンは正常に分泌されます。
しかし両方とも取り除かなくてはならない時は、その後甲状腺ホルモンを与え続ける
必要があります。

●薬による治療
甲状腺ホルモンの生成を妨げる薬を与えます。
一生にわたる投与が必要です。
また腫瘍そのものはこの治療によっては治りません。

この薬は強い副作用をみせることがあり、とくに血液中の白血球の数や、
血小板の数が少なくなると危険です。

これらの他に、放射線を出すヨード(ヨウ素)をネコに投与する必要もあります。
ヨードは甲状腺の中の異常をおこしている組織に集まり、その部分を壊します。
この方法は安全性は高いものの、特別な治療設備が必要なので、
いまのところ日本での治療は困難なようです。

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