下部尿路症候群
 

尿の中に結晶(尿結石)ができ、それが尿道につまったり、膀胱を傷つけたりする病気です。
オスネコもメスネコもこの病気になりますが、重大な症状が出るのはオスだけです。
オスの尿道はもともと細くて長いうえ、先端がさらに細くなっていて結晶がつまりやすいためです。
メスの尿道は太く短いので結晶によって塞がれる事はまずありません。

オスの尿道が結晶でつまって尿が出なくなると尿毒症などを発症して命の危険がおこります。
かつては尿石症とも呼ばれていました。

症状は尿が出にくくなっているので、たびたびトイレでしゃがんでいます。
便秘になった時もトイレに行く回数が増えますが、それよりもさらに頻繁になります。
治療をせずに結晶がつまったままだと急性腎不全となり尿毒症の症状が現れます。
食欲は無くなり、繰り返し吐き、体温も下がります。

この病気のネコの尿は乾燥するとサラサラした結晶が残る事もあります。
尿道をつまらせているのはこの結晶です。
そのため、症状が無くても尿に結晶が見つかったり、オスネコが尿をした後で
ペニスのまわりに結晶が見つかった時は病気を疑ってください。

もう一つの症状は病状に幅が有る事です。
それまで何も症状が無くてもネコがある日突然、血尿を出す事があります。
この時は膀胱全体からいちじるしく出血しています。
膀胱は無理に圧迫すると破裂するほどもろくなっています。
幸い、出血は一時的におこるもので、一週間以上続く事はありません。

メスネコがこの病気になると、ひんぱんに尿をしたり、
尿に血が混じるなどの症状が見られ、間質性膀胱炎と呼ばれる事もあります。

尿の中に結晶ができる理由は2つあります。
ひとつはネコの尿がもともと濃いこと、もう一つは食事です。
本来は乾燥地帯に済む動物であるネコは水を頻繁に飲む事はせず、体内で再利用します。

食事での原因は、普通ネコの尿は弱酸性ですが、食事の影響で尿がアルカリ性になると
尿中にストルバイトという結晶が作られます。この結晶が病気の原因となります。

ミネラル分の多いドライフードなどを食べさせると、大変発症しやすくなります。
ネコの食事をミネラル分の少ないモノ(特にマグネシウムの少ないもの)にすると
この病気が再発することは有りません。

この病気は冬に現れる事が多く、これは冬にネコが水を多く飲まなくなり、
また不活性になって脂肪を消費しにくくなるため、体内で水分がつくられなくなるため
とみられます。

飼い主の注意で予防できる病気です。

治療の方法は、排尿が困難になってからどのくらい時間がたっているかが問題となります。
尿が出なくなってそれほど時間がたっていないときには、まず尿道をふさいでいる結晶を
取り除きます。

尿が出なくなってから2〜3日経っている時はネコはたいてい尿毒症を発症しています。
その場合には、結晶を取り除いてから尿毒症の治療も行います。

結晶を取り除くには、普通カテーテルを尿道口から入れて尿道を洗浄する事によって
結晶を外へ流し出します。
症状が重い場合には尿道の結晶を取り去った後、カテーテルを入れっぱなしにして、
尿を出しっぱなしにすることもあります。

治療によって治っても、食事を変えなければ、100%再発します。

飼い主に出来る事は、
マグネシウムの少ないキャットフードをあげることです。
(食事中のマグネシウムの量が1%以下)であれば予防できます。
マグネシウムの量が少なければドライでもウエットフード、缶詰でもかまいません。

また、ウエットフードでも魚の缶詰は魚の身でもマグネシウムの多い部分を使う傾向があるため
結晶を予防する事は出来ません。(マグネシウムは魚の白身に少なく、血合いに多い)



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