慢性腎不全
 

この病気は、ネコの最大の死因の1つです。
うちに居たペルシャのブラッキーもこの病気で亡くなってしまいました。

腎臓の組織の大部分が壊れて、腎臓が十分に働かなくなった状態をいいます。
病状は少しずつ進み、ハッキリとした症状はなかなか現れません。

慢性腎不全になると、ネコは食欲が落ちてやせていきます。
貧血ぎみになることもあります。

ネコが水を飲む回数が増えたと思ったら腎不全を疑い、検査を受けた方が良いでしょう。
ただ、飲む水の量は健康な時とさほど変わらない事もあります。

慢性腎不全が進行すると食欲がまったくなくなり、繰り返し吐いて体温も下がります。
これは尿毒症の状態で緊急の治療が必要です。

大部分のネコは中年(5〜6才)を過ぎると、症状が見られなくても慢性腎不全になっています。
老齢になるとほぼ全てもネコが腎不全になると考えて良いでしょう。
腎不全が多い理由は分かっていません。

治療を行っても、もとの健康な状態には戻らないので治療の重点は次の2つにおかれます。
●残った腎臓の細胞をこれ以上こわさないようにする。
●残り少なくなった腎臓の働きを効果的に発揮させる。

治療は尿毒症になっている時はその治療を行います。
尿毒症でないとき、また、尿毒症が治まった時は、食事療法と薬による治療を行います。

●食事療法
慢性腎不全ではすでに腎臓の正常な部分は残り少なくなっているので、腎臓の働きを
助けると同時に、腎臓に出来る限り負担をかけないようにしましょう。

■飲み水
腎臓の負担を減らすには、まず水を十分に取る必要があります。
ですが、ネコは体が水を必要としている時でもあえて飲もうとしない事があります。
なので水分の多い食事を与えると同時にもっともネコが好む水飲みの方法であたえてください。
ネコは、水飲み容器の形状や、それが置かれている場所によって飲もうとはしないので
飼い主はいろいろ工夫してみてください。

特に10才以上のネコは、脱水症状になっていてもノドの渇きを感じないらしく水を飲もうと
しないので、ネコが高齢となったら飼い主は常にネコの水飲み具合を確認しなければなりません。

■食事
慢性腎不全になったときは、一般に低タンパク、低ナトリウムの食事を与えます。
タンパク質を減らせばそれだけ腎臓が処理しなければならない量が減るからです。
しかし、取り分け純粋な肉食動物であるネコはタンパク質の量が少ないと、
ますます食欲が落ちます。
そうなってしまうと、初めのうちは体内の脂肪によってエネルギーが燃やされますが、
それを使い切ると、今度は筋肉のタンパク質をエネルギーとして使うようになってしまうので、
腎臓の働きが低下していても、ネコの食欲を保つためにタンパク質をある程度は、
与えた方が良いといえます。
このときは、消化吸収のよい「生物価の高い食事」を与えてください。
生物価が高いとはタンパク質の利用効率が良い事を意味します。
卵のタンパク質を100として換算します。
牛肉タンパク質は70〜80
小麦のタンパク質は50くらいです。
ただし、肉にはカルシウムを排泄させる働きのあるリンが多く含まれているので、
腎臓病のときには低カルシウム状態になりがちですが、肉を食べるとこれが悪化します。
ネコに食欲が無い時には腎不全用の流動食を口から飲ませたり、チューブで鼻から
流し込みます。

■薬物療法
いくつかの薬を組み合わせて治療を行います
●たんぱく同化ホルモン
長期的な効果をもつたんぱく同化ホルモンを使用します。
この薬は体内でタンパク質の合成を助け腎臓への負担を軽減します。
またこの薬はネコの貧血状態を治し、食欲も刺激します。
●心不全の治療薬
慢性腎不全では高血圧になることがあります。
この薬は、血圧を下げ寿命を延ばす事ができます。
ビタミンDやビタミンB群も効果があります。
●窒素化合物の吸着剤
腎臓が処理しなくてはならない窒素化合物を腸内で吸収する薬を食事に混ぜます。
これだけで、除去できるわけではありませんが、腎臓の悪化を遅らせる効果は大きいと思います。


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